-----a tactician・Crawford-----




「君ね、あのタイミングで電話鳴らなかったらどうしてたのかな」
組織の広い庭を歩きながら、ルネは口を開いた。
「鳴るよ。オレが行くって直接流しておいたから」
あの命のやり取りは、電話が鳴るまでのただの時間稼ぎだった訳ね。
それでもあの無駄な度胸には納得がいかなかった。
「・・・・・・万が一にも、間に合わない可能性がある」
その言葉に、シュンは少しだけ俯いて微笑む。
「オレが本当に“何もせずに”半日過ごしてたとでも?」
どうなのかな、とルネは笑った。
「・・・・・・昨夜、向こうの全個室には死角の無いように監視カメラと盗聴器を仕掛けておいた」
あ、コレは幸之助に頼んだんだよ、と付け加えて笑う。
「辺りのビルには腕利きのスナイパーが4人待機してた。ギリギリまで撃つなって指示して」
「・・・・・・ナルホドね」
シュンの頬を銃弾が掠めた時、どこにも空気の揺れが無かった。待機していた彼らには撃つ気が無かったという事だ。
それは監視カメラを通しても弾道が見える程のプロにしか出来ない技だと知っている。
そんな人間達ですら一声で動かせる力が、彼にはあるというのだろうか。
「勿論あのパソコン表示も改ざん済み。万が一契約に失敗したとしても、 あの契約書は特殊な紙で作られてて40時間後に消滅するように出来てる。 今日明日は祝日で銀行はおろか公共機関なんて開いてない・・・・・・ そしてもう一枚には向こうの口座が書かれてるからそれだけでも簡単に揺さぶる事ができる。 それに全部録画、録音済みでそれを使うパターンも計画のひとつにあった。 ・・・・・・ルネの“部下”にすら“ボス”が頭上がらないトコ見せる事で あの界隈全ての組織が二度とウチには手を出さなくなるだろ」
掛けていた眼鏡を外すと、それを胸ポケットに滑らせた。
「組織なんて潰すのは簡単だ。そんな事をするよりは如何に利用するかを考えた方が確実にこちらの利益になる・・・・・・オレは元からそのつもりだったしな」
他にも色々策はあったんだけど面倒だったからな、と呟いて、持参していた絆創膏を頬に貼った。
「・・・・・・君の過去を、少しだけ見れた気がしたよ」
――――――――――これ程の人間が何故ココに収まっているのか、益々分からなくなったケドね。
大きな扉を開けて建物の中に足を踏み入れた。
「どこに行ってたんですか!二人して!」
既に時刻はお昼過ぎ。
戻った早々聞こえて来たのは、フイリーの怒鳴り声だった。
「ご、ごめんなさい」
「ごめんなさいで済みますか!最近無断欠勤が多いですよ!罰として三日リンゴ抜きです!」
「それはちょっとヒドイよフイリ〜」
食べられそうな勢いで怒りを露わにするフイリーに、シュンは泣きそうになった。
――――――――――無断欠勤が、最近・・・・・多い? ・・・・・・・・・・・あー・・・・・ナルホドね。
何かに気付いたらしいルネが、見かねて間に入る。
「まーまー落ち着いてよフイリー」
「水道代今日までだったんですよ!それなのにこの人・・・・・・ッ」
ふるふると震えるフイリーに近付くと、何を思ったのか、ルネはほっぺにちゅーをしてみせた。
「なッ!」
「ゴメンね、僕がきつーくお説教しておくから今回はコレで許して☆」
「わー、ちゅーだ!ちゅー」
「スゴイね」
いつの間にか辺りに子ども達がわらわらと集まって来ていた。
ルネは子ども達に向かって唇に人差し指を当ててみせる。
「フグリ、チェイス、このちゅーはみんなには内緒だぞー?」
「うん」
「わかった!」
「あ、ほら走ると危ないよ」
「はーい!」
シュンが背中から声をかけた。楽しそうに走り去る二人を、彼は暖かく見つめる。

そんな彼を見て、ルネは微笑んだ。





















  



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あとがき。

サブタイトル〜オレだってやる時はやるんだぞ!〜
最後までご覧頂きありがとうございました。
恐ろしい程筆(指?)が進んで、1日半で書き上げた時は自分ちょっとアホなんじゃないかと思った。もっと他にやるべきことがあるだろう、と。
いやしかし逆に考えればルネさんに降り回された1日半だったとも言えるのでヨシとします(いいんだ)
確かルネさんって腕っ節強かったなーと思い浮かべて、そうなれば一緒にいるともれなく守ってくれるんじゃないか(←!)と、なりました。
しかし背後からのセクハラ対策=ルネさん対策だと思います。
・・・・・・・色々スミマセンでした。

僅かでもダークで大人な一面を垣間見れたと感じていただければ嬉しいです。
感想いただけるともっと嬉しいです(自重しろ)






あ、そうそう。タイトルの「a tactician・Crawford」は、「策士・クロフォード」でした。